管理栄養学科×名古屋市千種区役所・千種保健センター
大学の学びを社会で実践。有志メンバーが受け継いでいく地域貢献
椙山女学園大学と名古屋市千種区役所は、2019年に包括連携協定を締結し、各学部学科の学びを生かしたさまざまな連携活動を行っています。管理栄養学科では、区役所と連携した離乳食レシピの開発や、保健センターとの親子クッキング教室の開催を行っており、その活動の中心は管理栄養士の卵である、有志の学生たちです。
今回は、プロジェクトの全体監修を担う三田先生と、この活動に携わる2人の学生、千種区役所・千種保健センターのプロジェクト担当者の方に、これまでの活動内容や連携によって生まれた成果、今後の展望についてお話を伺いました。
学生が主体となって行う地域連携プロジェクト
—管理栄養学科と千種区の連携が始まった経緯を教えてください。
三田 千種保健センターの管理栄養士の方から、「学生と協働することで、若い世代の視点や発想を取り入れた子育て支援ができないか」と相談を受けたのが始まりでした。その後、2019年6月に椙山女学園大学と千種区役所が包括連携協定を結び、その一環として区役所や保健センターとの連携プロジェクトがスタートしました。
—現在、どのような連携プロジェクトが行われていますか?
平山 管理栄養学科の学生さんと連携しているプロジェクトは2つあり、まず区役所の民生子ども課では離乳食レシピの開発を行っています。「市民の皆さんの子育てを応援したい」という思いで、区役所と保健センターの管理栄養士と学生さんたちが協力してレシピを開発し、レシピ集を発行しています。2021年度からスタートし、今年度で6年目を迎えました。私は3年目から担当者として関わっています。
加藤 2つ目のプロジェクトとして、保健センターでは、管理栄養学科の学生さんと共に親子クッキング教室を開催しています。子どもたちに向けた食育活動として、調理実演、簡単な調理実習と試食、食育ゲーム、講話などを行っています。私は管理栄養士として、大学との連携事業の中ではこの教室の運営をメインに、離乳食レシピの開発にも携わっています。
三田 離乳食レシピの開発も親子クッキング教室も、管理栄養学科の有志学生による活動です。私はプロジェクトの全体監修やサポートをする役割です。
—山田さんと神谷さんは、これらのプロジェクトにどのように関わっていますか?
神谷 私は1年生のときから離乳食のレシピ開発に携わりました。この活動は3年生が中心になって取り組んでいるので、自分が3年生の時に制作した冊子は思い入れが強いです。
山田 私も1年生から離乳食レシピの開発に関わっていて、特に3年生の時には神谷さんや他のメンバーとともに全体のまとめ役として活動していました。また、私は親子クッキング教室にも携わっています。
—お二人がこの活動に参加しようと思った理由を教えてください。
山田 学科のWEB掲示板でこの活動を知りました。管理栄養学科は、コンテストやセミナー、今回のようなプロジェクトなど学生が参加できる機会が多いのですが、先生方が都度案内を送ってくださいます。離乳食レシピは、大学で勉強した内容をどのように社会で生かせるのか、より実践的に学ぶ機会になると考え、参加しました。この活動を通して、自分の知識をもっと深めたいと思いました。
神谷 私はもともと商品開発やレシピ開発自体にも興味がありました。大学の授業で得た知識を実践し、社会に役に立つものを生み出してみたい、と思っていたのもきっかけです。
市民の声に寄り添ったオリジナル離乳食レシピを開発
—離乳食レシピの開発プロジェクトの進め方について教えてください。
平山 まず、大学さんと区役所と保健センターの三者で打合せをして、毎年のテーマを設定します。テーマの参考にするために、離乳食レシピの冊子を実際に手に取った方にアンケートを実施し、2023年度には要望が多かった「時短」をテーマにしました。2024年度は、「単品だけでなく、1日の献立メニューを知りたい」という声をもとに、お子さんの成長に合わせた段階別のレシピを考案することを制作テーマにしました。
—レシピ開発はどのようなプロセスで進めていますか?
山田 テーマが決まったらレシピの開発を学生で進めていきます。1年生から3年生まで、毎年15~20人ほどの有志のメンバーが集まるので、2024年度は成長段階別のレシピを考案するために初期・中期・後期のチームに分かれて、各チームでレシピを考えました。
神谷 レシピを考える上で、1・2年生は離乳食について授業で学んでいないため、まず3年生がレクチャーを行います。それから、1・2年生に献立の案を考えてきてもらって、3年生が修正や調整をしていきました。
平山 学生さんからいただいたレシピの案を私たちでも確認して、最終的に決定したレシピは冊子にし、千種保健センターの3カ月児健診や千種区役所民生子ども課、保健センター窓口で配付しています。たくさんの方に見ていただけるように、千種区のWebサイトでも見られるようにしています。
—三田先生はどのように活動をサポートしていますか?
三田 あくまで学生たちが主体の活動ですから、私は後方支援に徹していますね。「学生ならではの発想や感性を取り入れたい」という区役所の要望もありますので、学生のオリジナリティをできる限り生かしたいと考えています。
1・2年生が出すレシピ案の中には、独創的なものもよく出てくるので、3年生がレシピを修正する際にアドバイスするなど、サポートを行っています。
—山田さんと神谷さんは、この活動を通してどんな学びがありましたか?
山田 1年生の頃は、離乳食についてまだよく理解できていない面もありましたが、3年連続で関わってきたことで、知識と経験がどんどん深まっていきました。大学の座学や実習で学んできた内容を実践できてよかったです。
神谷 大学では、決まったレシピをもとに離乳食を作る授業はありましたが、レシピ開発の機会はなかったので、学んだことが開発で生かせるんだなと実感できました。他の学年のメンバーと協力する中で、自分では思いつかなかったアイデアもたくさんあって、考えの幅が広がったと感じます。
—活動の中でどのような時にやりがいを感じましたか?
山田 自分たちが考えたレシピが実際に冊子に載っているのを見たときは、頑張ってよかったなと大きなやりがいを感じました。新聞に取り上げられたこともうれしかったです!
神谷 私も、みんなでレシピを考えて調整をして、最後に形になったものを見ると、やっぱり達成感がありましたね!
学生ならではの新鮮なアイデアで地域に貢献
—平山さんと加藤さんは、学生との協働を通して得た学びや気づきはありましたか?
平山 学生の皆さんが提案してくれるレシピは、やはり目新しさがあってよいですね。例えば「鱈(たら)のパピヨット」や「鯵(あじ)のタコライス」といったユニークなメニューは、職員からはなかなか出てこないアイデアですし、若い世代ならではの感性だなと思いました。私自身もとても勉強になっています。
加藤 私たちだけで考えると、ついつい扱いやすい食材や無難なレシピになってしまいがちなので、若い人たちの意見はとても貴重だなと思います。冊子に掲載したレシピは、保健センターの離乳食教室でも使わせていただいています。教室に参加した方たちに「学生さんが考えたレシピなんですよ」と話すと、興味を持ってもらえるし、リアクションがとてもよいです!
—行政と大学が協働する意義については、どのように考えていますか?
平山 今はWebや雑誌などで離乳食の情報はたくさんあふれているのに、なぜレシピ開発をするのか、という意見もあると思います。でも、離乳食で悩んでいる親御さんは本当に多くて……メニューの選択肢が増えれば、なかなか離乳食を食べてくれないお子さんでも「これだったら食べられる」というものが見つけやすくなります。だから、新鮮な視点を持った学生さんと一緒に新たなメニューを開発する意義は大きいと考えています。そして、大学との連携プロジェクトは、大学生のような若い世代が子育てについて考えるきっかけづくりにもなるはずです。そういった意味でも、行政として取り組む意義があると思っています。
—椙山生の印象はいかがでしょうか。
平山 離乳食レシピの開発プロジェクトの他にも、椙山の学生さんと連携するプロジェクトがありますが、どの事業にもとても前向きな姿勢で熱心に取り組んでくださっています。同じ事業を何年も続けていくうちに、学生の皆さんから出てくるアイデアが洗練されていくのを感じますし、試作などもスムーズに手際よく進めてくれるので、頼もしく感じています。
—加藤さんは椙山のOGだと伺いました。後輩たちと協働する中でどのようなことを感じていますか?
加藤 やっぱり母校には愛着がありますし、後輩と一緒に取り組む機会が持てたことはうれしいです。先ほど、3年生が1・2年生に教えているというお話を聞いて、私の学生時代には先輩に教えてもらったり、後輩に教えながら一緒に活動する実践の機会がなかったので、とてもよい経験をされているなとうらやましく感じました。自分の知識を分かりやすく伝えるのはなかなか難しかったとは思いますが、これから社会に出る皆さんにとって大きな力になるはずです。
これからも大学×地域の継続的な取り組みを
—大学と行政の連携プロジェクトについて、今後の展望をお聞かせください。
平山 行政の事業の中には単年度で終わってしまうものもありますが、離乳食レシピの開発は今年で6年目を迎えることができました。継続することに意義があると思いますので、今後もいかにして続けていくかを考えて取り組んでいきたいですね。
三田 こうやって継続できていることはとてもうれしいですし、これからもご縁を大切にしていきたいですね。学生たちにとって本当によい機会をいただいているので、今後も長く続けていきたいです。
—最後に高校生に向けてメッセージをお願いします。
山田 椙山の管理栄養学科は、食育やスポーツ栄養など、自分が興味のある分野で学びを深められる場所です。離乳食レシピの開発のような実践の場もあるので、いろいろなチャレンジができる大学だと思います。
神谷 椙山には、企業や地域の方と協力して行う活動にもたくさんの種類があり、積極的に何かに挑戦してみようとする学生も多いです。こういった活動に興味がある方は、充実した大学生活を送れると思います。
三田 私は教員として、学生たちの「やりたい」という気持ちに寄り添うことを大切にしています。これまでの取り組みで一人ひとりの「やりたい」を実現できるような基盤を作ってきました。これからも、経験を積みたい学生が積極的に学べる環境を作っていけるようにサポートしていきます。高校生の皆さんは、ぜひ興味のある分野を見つけて飛び込んでみてください。