フィールドワークで学び得る、多様な価値観と経験

阿部 純一郎 准教授

現代社会学科

大学を飛び出して地域の声を聞き、まちの魅力を最大化する。2024年4月、現場の学びをより重視して、新しく生まれ変わった「情報社会学部現代社会学科」。現代社会学科で、学生とともに“現場”=フィールドワークに出かけ、観光まちづくりの視点から社会を考える阿部純一郎先生にインタビューしました。

知識やスキル以上に、「現場での経験」を大切に

私の専門は観光学および歴史社会学で、日本がアジアを植民地にしていた戦前から現代までの、観光開発の歴史について研究しています。授業では、観光の歴史や観光地経営に必要な戦略について教える一方で、学生たちとフィールドワーク(現地調査)を行っています。その中で、行政や旅行会社と提携した実践型のプロジェクトにも取り組んでいます。例えば、愛知県の観光地として知られる犬山市の調査では、地域の祭りの担い手が年々減少しているという課題が明らかになり、学生とともに課題解決プランを作成し、学外コンテストで発表しました。

学園の教育理念である”ひとを大切にできる”、”ひとと支えあえる”、”自らがんばれる”という精神は、座学で知識として教わるものではなく、体験や経験を通して体に染み込んでいくものと考えています。私が現地調査を通して学生に提供しているのは、そのための環境です。「どうすれば生き生きとした経験ができるのか」を模索しながら、学びの環境をつくっています。

学生と教員の化学反応を楽しむ毎日

フィールドワークのメリットは、実際に訪れることで地域が抱える課題に深く入り込むことができる点です。学生たちは、現状を把握しながら最大限できることを提案するなど、粘り強く考える力を身に付けていきます。また、SNSを駆使して新しいトレンドを見つける力に長けており、一緒に現場に行くと、私では思いもつかない視点や発見があり、いつも驚かされます。学生の新たな視点に私の知識や経験を組み合わせて、点と点だったアイデアを線でつないでいくのが私の仕事です。講義とは異なり、実践型のプロジェクトでは学生と教員の視点が交じり合い、化学反応が起きるのがとても楽しいですね。

また、プロジェクトを進めるうちに、学生の発言力や行動力が増し、未経験の役割にも自然に順応している様子をみると「プロジェクトや役割が人を育てる」ことを実感します。口うるさく言わなくても、学生が率先して動き、成長していく姿が見られるのは嬉しいものです。

多様でリアルな出会いがあるから面白い

一般に観光業と聞くと、旅行会社や航空、ホテルのイメージが強いかもしれません。実はほかにも、行政やライター業など観光に携わる仕事はたくさんあります。私の授業やプロジェクトの特徴は、社会で活躍する多くの方の生の声を聞いて学べること。学生のうちに、社会には幅広い選択肢があることを知り、広い視野を持ってやりたい仕事を選んでほしいです。学生の中には、プロジェクトで携わった地域が気に入り、そのままその地方の公務員になった卒業生もいます。

仕事柄、地域や家庭で活躍する多くの女性に出会うため、「会社」だけが社会ではないと考えています。例えば、昔の町内会は男性が仕切っていましたが、今では女性が中心となって情報発信やまちづくりを行い、成功しているところもあります。フィールドワークでは、今まで当たり前と思っていた概念が覆されるような出会いもあり、本当に面白いです。現場のリアルな熱量や声は、すっと心に入り込みます。だからこそ学生には、知識やスキルだけでなく新しい出会いを大切にしてほしいですね。世代も国籍も違う方々のライフストーリーを聞いて、自分の可能性を型に押し込めず広げていってほしい。そして、自分のやりたいことを見つけて邁進してほしいです。

一人として同じ学生はいません。彼女たちの多様でリアルな価値観を生かすことができるように、私自身もアップデートしながら研究・教育活動を続けていきたいです。

他のエピソードを見る