ジェンダーフリーの視点で法律や制度を見つめ直す

柴 由花 教授

現代マネジメント学科

人々の円滑な社会生活になくてはならない法律。とりわけ租税法は、時代背景を色濃く映す鏡でもあります。事業承継など高度な租税法の専門教育にとどまらず、ゼミ生とともに地域貢献活動にも取り組む柴先生に、女子大で租税法研究に取り組む奥深さを聞きました。

法整備で男女ともに活躍できる社会へ

国税専門官経験を経て、大学院で租税法を学び、現在は租税法を中心に講義や研究指導を行っています。また、諸外国の相続税や環境税について日本法との比較を通じた研究も行っています。法律は、人々の円滑な社会生活になくてはならないものであり、法律を学ぶことは学生が将来社会で活躍する上でもとても役に立ちます。とりわけ、相続税法や所得税法は、自分自身の生活に関わることが多いため、学ぶ意義が大きいと思います。

また、女子大では、法律や制度をジェンダーの視点で捉え直すことも少なくありません。所得税法や相続税法の中には「配偶者」という言葉があり、それが「男性」か「女性」かは書いてありません。しかし私たちは「配偶者控除」と聞くと納税者である「男性」の配偶者としての「女性」を想定しがちです。「女性が稼いで男性を養う」という考え方でも良いはずなのに、無意識のうちにバイアスがかかってしまっているのです。相続税法も同じで「男性が先に亡くなり、残された女性が大変だ」という視点でつくられています。

このように、法律がつくられた時代背景までしっかり読み込み、時代の変化に合わせて問題点を考え、男女ともにどんな選択をしようとも、誰もが活躍でき、暮らしやすい環境を整える法整備がこれからとても必要だと思います。

専門性を高めることが、自らの強みになる

本学は、もともと女性が手に職をつけるための裁縫女学校から始まり、時代が変わった今でも、女性が一生涯を生き抜く力を身に付けるための教育を一貫して行っています。

仕事だけでなく、家庭や友人関係、地域との関わりも社会のひとつです。日常生活におけるトラブルや困りごとなど、さまざまな出来事に対応する力が必要になります。そんなときに身を守ってくれるのが法律です。若い学生にはまだ実感が沸かないかもしれませんが、長い人生においていつか法律を学んでいてよかったと思う時がくると思います。

さらに、専門性を高めることは自分の強みとなります。学生たちには、まず在学中に専門的な知識やスキルをしっかり身につけて欲しいと思います。特に租税法や会計の知識は、社会でとても役に立ちます。簿記をはじめ、ファイナンシャル・プランナーなどの資格の取得も応援しています。最近では、大学院に進学し、租税法を学び、税理士をめざす学生も増えてきました。専門性の高い資格にチャレンジすることで、人生を切り拓いて欲しいと願っています。

自分の足を運んで体験する「地域貢献活動」で得られるもの

現代マネジメント学科には、公共政策を学ぶ中で公務員を目指す学生もいます。公共政策を考える上で、地域を知ることは不可欠です。人口減少が日本の大きな課題となっていますが、効果的な政策を提言するためには、人口減少が地域にどのような課題をもたらしているかを実際に目で見ることが必要だと思います。

ゼミでは、実際に地域のボランティアやワークショップに参加し、実体験をもとに政策提言を行っています。例えば、静岡県の中山間地域での「一社一村しずおか運動」に参加し、お茶摘みや耕作放棄地の草刈りなどのボランティア活動に取り組んでいます。地域の実態を目の当たりにすることで、地域社会の問題を当事者として考えることができます。活動を行った静岡市葵区水見色地域は、江戸時代は幕府領として年貢を納めていたという歴史があり、現在でも良質なお茶の産地。学生たちは、名産のお茶を丁寧に急須で入れたり、こんにゃく作りのワークショップを通じて、地域への理解を深めています。地域の歴史的背景を踏まえ、地域に誇りを持つ”シビック・プライド”を尊重し、実効性のある政策提言を行うことを大切にしています。

実体験から生活者のリアルな暮らしを学び、幅広い世代の多様な人の生き方に触れて経験値を高めておくことは、働く上でもとても大切ではないでしょうか。机上の勉強やSNSからの情報からだけでは決して得られない、地域住民との関わりの中での気づきは、公共性の高い仕事に就きたいと考える学生にとって大きな糧になると考えています。

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