
言語を通して「人間」を学び、主体的・自覚的に物事を判断する力を
芝垣 亮介教授
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英語英米
小倉 祥子 教授
人間共生学科
2024年4月、新しく生まれ変わる「人間関係学部人間共生学科」。ジェンダー・女性学に関する講義数は、国内最大級です。そんな人間共生学科で、「女性と職業生活」などの講義を担当し、女性の生き方や働き方について研究する小倉先生にお話を聞きました。
大学卒業後、高等学校の家庭科教諭として働いていました。家庭科は「生活者として生活課題などを解決する力の育成」などを目指し、家庭と社会との関わりを探求するなど、仕事にやりがいを感じていました。教員を続けていくなかで、生徒に「夢を持つこと」や「挑戦することの大切さ」などを語るうちに、私自身、大学時代から興味があったマスコミ業界に挑戦してみたい気持ちが芽生え、その後、地元のテレビ局に転職しました。
それまで地方公務員として働いていたので、労働環境の変化にはとても驚きました。多くの男性正社員と、私を含む多くの女性非正社員で業務が遂行されていく様子に、日本の労働の現状はどのようになっているのか、女性たちはそれに納得しているのかなど、疑問が次々に浮かんできました。
そこで、女性の労働問題について研究したいと思い、大学院での学び直しを決意しました。女性の就業継続が可能な企業内制度や、企業のジェンダー平等施策などについて、主に労働組合を通じた聞き取り調査などを実施しながら研究を続けています。最近は、地域における女性のキャリア形成の違いなど、地域差にも注目しています。
こうした経験や研究をもとに、本学では女性と職業生活についての講義で、1985年の均等法成立以降の女性の労働実態の変遷などについて教えています。
日本は男女共同参加社会の実現に向けて、今まさに変化しています。この社会に生きる一人の人間として、学生にも、自分が主体であることを伝えたいと思っています。ですから、女子大で労働に関するジェンダー問題に関連する講義ができることは、この先ジェンダー平等な社会を実現するために意義があると期待しています。
誰しも、ジェンダー教育を受けたからといって、自分のアンコンシャス・バイアスにすぐに気が付くとは限りません。ですが、その後の大学での学びや、卒業後の仕事や子育て、地域活動などさまざまな経験を積むなかで、「性差ではなく個人差だ」と、実感する機会が訪れるのではないでしょうか。卒業後も日常での体験から学びを振り返り、自ら気づくことが大切だと考えています。
学生生活では、「女性だから」「男性だから」と明確に区別されることは多くありませんが、社会に出た途端、急にジェンダー規範が立ちはだかります。目にみえる差別はなくなっているとはいえ、出産後に昇進や昇給が遠のく「マミートラック」などに悩む女性は存在します。学生のうちに労働に関する簡単な法律や、日本の税・社会保障制度、労働環境の変化を学ぶことで、今の社会がどのように形成されたのかを知ることができ、自分たちが主体となって労働環境を変えられることを伝えていきたいです。
ただし、能動的に動くためには武器が必要です。大学時代に得た知識や友人、本学の教職員とのつながりは、人生においてきっと大きな武器となり、重要な局面で支えてくれるはずです。
ジェンダー平等の先進国である北欧のフィンランドで調査をしたとき、調査先で「今の一番の悩みは、就業時間外に労働者がメールを確認してしまうこと」と言われて驚きました。誰しもが平等に与えられている24時間だからこそ、仕事をするのは就業時間内であって、「就業時間以外に何をするか?」を意識して、家族と過ごす時間、リラックスする時間、趣味の時間……など選択肢を持つことが大切だと実感しました。
長い人生、ライフコースが変化することもあると思います。選択をせまられた時、その道の分岐点で「みんなが選んでいるから」「母親だから」とジェンダー規範に左右されずに進む方向を決めてほしいと思います。自分がどう生きたいのかを主体的に考え、選択してください。自分で選んだ道なら、どんな結果でも納得できます。私がそうだったように、人はいつでも再挑戦できます。
これから、日本社会の発展に「ジェンダー平等」は不可欠です。まずは現状を把握し、誰かが何かをしてくれるのを待つのではなく、自ら動ける人間になること。自分の得意なことを見つける力は、きっと人生を豊かにしてくれるはずです。