ジェンダーを学び、自分の可能性を広げる。「ごきげん」に生きる力を手に入れる
藤原 直子 教授
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人間共生学科
小榮住 まゆ子 教授
人間共生学科
人間共生学科には社会福祉士国家試験の受験資格を得られるカリキュラムがあります。今回はソーシャルワーカーを目指す学生たちと日々向き合っている小榮住先生にインタビューを行い、現場視点での支援のあり方や、支援者を目指す学生たちへの想いを伺いました。
大学教員になる前は、医療や教育の現場でソーシャルワーカーをしていました。小学校に勤めていたときは、相談室にただ座って相談を待つのではなく、朝から教室に入り子どもと一緒に過ごすよう心がけていました。すると表情や友だちとの関わりが自然に見えてきて「今日は声をかけてみようかな」「今日はそっとしておこう」と判断が変わるんです。ほんのひとつの声かけで支援の方向が変わることもあるのが現場の面白さであり、難しさでもあります。
支援にはマニュアル通りの正解はありません。その時その時で「どう判断するか」「今この人に必要なのは何か」を考え続けるしかない。ソーシャルワーカーの仕事は社会資源や制度をコーディネートし必要なサービスに繋げていくことと考えられがちですが、それだけに留まらずさまざまなことを行います。イメージするのが難しいソーシャルワーカーの仕事ですが、働き始めた当時は今以上に専門性が分かりづらい状況でした。たとえば、掃除は環境整備を行うことで当事者の権利をまもる大事な手段ですが、専門性がないと単なる雑務として捉えられてしまいます。食事介助・洗濯・掃除・何気ない会話なども、すべてが当事者の権利をまもることにつながっているのがソーシャルワークの視点。支援をする中で、自分自身も実践の何がソーシャルワークなのか学びなおしたいと考え、仕事をしながら大学院に進学しました。
大学院で学ぶ中で「言語化しにくいソーシャルワークを分かりやすく伝え、より多くのソーシャルワーカーを養成したい」と考え、研究の道へ進み教鞭をとるようになりました。人間共生学科には社会福祉士国家試験の受験資格を得られるカリキュラムがありますが、履修する学生には医療ソーシャルワーカーや児童福祉司を目指している人もいれば、保護者の勧めでなんとなく選んだ人もいます。しかし、励まし合いながら実習や国家試験を乗り越え、4年間を駆け抜ける中で、全員が覚悟を持った顔つきに変わります。私は彼女たちに「支援者であり続けることが大事」と伝えています。完璧な答えがないからこそ、迷いながらも寄り添い続けるという積み重ねが、支援の土台となり、支援者としての力になるからです。
私の研究テーマは「ステップファミリーとのソーシャルワーク」です。ひとり親家庭への支援は制度的に整ってきましたが、再婚家庭に対しての支援制度はまだまだです。そのため“標準家族”として扱われ、見えにくい課題が放置されてしまうのです。実際には継母子関係に悩んでいたり、継母というジェンダー規範にしんどさを抱えたりするケースが少なくありません。
支援の現場では「できていないこと」を並べてしまいがちです。けれども家族の中には必ず「できていること」や「強み」があります。そこに光を当てるだけで支援の方向性は変わります。
たとえばステップファミリーのなかには子どもが不登校になるケースもあります。記録には「学校に行けない」といった事実ばかりが並びますが、実際には「朝早くても継父と話すために起きて来られる」「家であれば友達と楽しく遊ぶことができているといったよい面もあります。「問題のある家族」ではなく、「問題に立ち向かおうとする強い家族」として支援者が捉え声をかけると、関わり方そのものが前向きに変わります。声かけひとつで支援が好転することを、私は何度も経験してきました。
制度の不備を補うことも必要ですが、現場でどう支援するかを模索し続けることが最も大切です。ステップファミリーという多様な家族のあり方を通じて、誰もが取り残されない仕組みを築くことが、これからのソーシャルワークの大切な課題だと考えています。
そして現場の家族支援と同じように、大学での学生との関わりも一人ひとりに物語があります。私は毎年多くの学生と出会い、卒業を見送ってきましたが、印象に残るのは特定の誰かではなく全員です。それぞれが自分のペースで変化と成長をして、卒業後も連絡を取り続けながらその歩みを見届けられることが、私にとって大きな喜びであり学びでもあります。
この大学で育まれるしなやかな強さのことを、私は「椙山魂」と呼んでいます。4年間の学びの中で、学生は少しずつ変化していきます。リーダーシップを発揮したり、自己開示をする場面をたくさん経験することで、最初から素直な子はさらに伸び、殻をまとっていた子も素直さを身につけていく。安心して弱さを出し、弱さを受け入れてもらう経験をするからこそ、他者との違いを受け入れ、他者に手を伸ばせるようになります。その成長を間近で見られるのは、教員という仕事の醍醐味です。
私は学生に「ゆらいでもよい」と伝えています。支援者も一人の人間であり、疲弊することもあります。その時に大事なのはゆらがない強さではなく、チームで助け合ってエンパワメントしながら、自分のゆらぎを理解し、客観的に面白がることができるしなやかさだと考えます。本学は、社会に出る前にそのベースを築く場所なのです。
そしてもうひとつ、私が大切にしているのがサードプレイスの存在です。私自身も地域のレクリエーションバレーボールチームで活動をしていますが、チームの年輩の方に叱咤されながら一人のプレーヤーとして汗を流す時間は、普段の教員という立場を離れ役割を変えられる貴重な機会になっています。
社会に出ると、仕事や家庭だけで自分を形づくってしまいがちですが、それだけでは心が窮屈になることもあるでしょう。だからこそ地域社会につながり、自分を解放できる居場所を持つことが必要なのです。学生にも、自分なりのサードプレイスを見つけてほしいと思っています。
藤原 直子 教授
人間共生学科
井澤 幸 准教授
生活環境デザイン学科
柴 由花 教授
現代マネジメント学科