ジェンダーを学び、自分の可能性を広げる。「ごきげん」に生きる力を手に入れる

藤原 直子 教授

人間共生学科

多様化した社会においてジェンダーを深く理解することは、人がつながり支え合う共生社会を創造するための第一歩です。人間共生学科で、「生」と「性」の観点から、人間や人間関係をとらえることの面白さを伝える藤原先生にインタビューしました。

社会における「男らしさ・女らしさ」への「違和感」が研究を志すきっかけに

一人ひとりの成長に深く関わる「教師」という職業に魅力を感じていたことと、特定の教科ではなく、まるごとの子どもの教育に携わりたいという思いから、小学校教諭を目指して地元の大学で学んでいました。大学での学びや良き仲間たちとの大学生活は充実していたものの、大学4年になる頃、地元で教師として生きる未来に対してどこか閉塞感を覚え始めました。

ちょうどその頃、卒論のテーマを探す中でジェンダーに関する書籍に出会い、それまで漠然と感じていた「女らしさ」や「男らしさ」への窮屈さに言葉として向き合うことができました。「なんでみんな性別にこだわる?」そんな問いの答えがこの分野にあると感じて、人間形成におけるジェンダーの影響をテーマに卒論を書いたことが、私のジェンダー研究の出発点です。

2000年に本学に着任して以来、私は人生をしなやかに生き抜く人材の育成を目指し、「人間関係とジェンダー」「ジェンダー・セクシュアリティ」に関する授業を担当してきました。生と性の視点から、人間や人間関係を捉えることの面白さを学生たちに伝えることを大切にしています。

「人間」とひとことで言っても、その生き方や価値観はさまざまで、背景や属性も多様です。こうした違いは、個人の選択だけでなく、社会のさまざまな影響を受けながら形作られていきます。特に、一人ひとりの性のあり方は、気づかないうちに、周囲の期待や固定観念、社会のルールに影響を受けています。だからこそ、自分がどのように「ジェンダー」の影響を受けているのかを意識しながら生きることが、大切なのではないでしょうか。

自分はどのように生きていきたいのか。自分の考えや行動に、どんな思い込みがあるのか。こうした問いに向き合うことが、社会の仕組みを理解することにつながり、また自分自身をより深く知るきっかけにもなります。

ジェンダーを学び、自分らしくごきげんに生きるための「自分軸」を育む

私は教育とジェンダーを研究する立場として、女子大という環境で教育実践できることをとても幸運に感じています。本学に集まる学生たちが、自分らしく伸びやかに人生を歩めるよう支援し、それぞれが自分の「生」と「性」を大切にしながら生きていけるよう応援したいと思っています。

「女性」というひとつの枠組みの中でも、実に多様な「女性」が存在し、それぞれが抱く「なりたい自分」も異なります。そう考えると、社会や周囲が求めるような「女性」に縛られることなく、自分がありたい姿で望むように生きるべきだと考えます。
ただ、この社会で「女性」として生きるなかで、時には生きづらさを感じる場面に直面することもあるかもしれません。そんなとき、自分なりに折り合いをつけつつも、前向きに日々を過ごすためには、ジェンダーを学ぶことで得られる視点や視野が大きな助けになると思います。

ジェンダーについての知識を深めることで、「自分にとって幸せな生き方とは何か」が明確になっていくと思います。学生たちには、その「自分軸」をしっかりと持つことで、生きづらさを感じたときに、あるときは正面から立ち向かい、またあるときはヒラリとうまくかわすといった柔軟さを身につけてほしいと思っています。

また、私が学生たちに常に伝えているのは、経済的自立の重要性です。性別に関係なく、自分らしい人生を選択するためには、経済的な基盤が不可欠ではないでしょうか。「自分で稼ぐ」ことで将来の選択肢を広げることにつながると思っています。卒業生から子育てとキャリアの両立について相談を受けることもありますが、私は経済的な自立を大切に、それぞれの状況にあった働き方を一緒に考えるようにしています。

身近なところから社会を変えていく学生・卒業生の姿がエネルギーに

教員のやりがいは、学生や卒業生から「蒔いた種が芽を出す」ことを実感できるフィードバックをもらえることです。身近なところから社会を変えようと奮闘する姿に励まされ、私自身も大きなエネルギーをもらっています。

学生と関わる際、「この人はどんな人なんだろう?」「何が好きで、何が苦手なのか?」「どんなときに笑顔が出るのだろう?」という関心をもって接しています。人が好きなんでしょうね。授業の中では、さまざな役割を学生にまんべんなく任せ、些細なことでも感謝を伝え合うことを大切にしています。そうすることで、学生は思いもよらなかった自分の魅力に気づき、徐々に自信を持てるようになります。こうした人との関わりの中での気づきや、ジェンダーに関する学びを生かし、社会で前向きに人と関わる学生や卒業生が数多くいます。

例えば、アルバイト先で「誕生日ケーキのろうそくは、男の子=青、女の子=ピンク」と決められていたルールを見直して、「子どもが好きな色を選べるように」変えた学生がいました。また、指輪を購入しようとしていた男性の接客をした際に、「プレゼントする相手が女性とは限らないかも」と察し、性別にとらわれない「大切な方」という表現でご案内したところ、とても満足してくれたという卒業生からの報告もありました。
このように本学での学びを糧に、社会に根強く残るジェンダーバイアスを解消しようとする学生や卒業生のエピソードは数えきれないほどあります。

今後も教員として「性の多様性が尊重される社会とはどのようなものか」を、より実践的に捉える仕掛けを考えていきたいと思います。その一環として、現在、大学生が「中学生に生理を教える授業」を高校生にレクチャーするプログラムを構想中です。さらに、NPO団体やフェムテック企業などのイベントにも積極的に関わり、学生が大学の枠を超えて学ぶ機会を増やしていく予定です。

学生たちが社会を変えていく主体へと成長できるよう、さまざまなきっかけや刺激をこれからも提供していきたいですね。

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