外国語学部:あいち国際女性映画祭2025・宮森監督×藤岡ゼミ生対談 「自分らしく生きる」をどう表現するか

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2025年、外国語学部の藤岡阿由未教授のゼミが「あいち国際女性映画祭2025」の魅力発信の連携を行いました。

「あいち国際女性映画祭2025×椙山女学園大学外国語学部藤岡ゼミ」の連携企画は、パフォーミングアーツ研究の実践的学びと国際的な芸術文化とをつなぐ取り組みです。

9月12日(金)、藤岡ゼミは、演劇祭上映作品『わたしの頭はいつもうるさい』の宮森玲実監督と対談を行いました。表現手法、女性監督としての視座、若い世代への想いを語って頂きました。
ゼミ生  
この作品を簡単に紹介してください。

宮森監督
 
夢や目標を抱いたすべての人に贈る“クォーターライフクライシスムービー”です。25歳から30歳くらいの間は、「このままでいいのかな」「やりたいことを我慢して働いてきたけど大丈夫かな」「逆にやりたいことをやってきたけど本当に正しかったのかな」と揺れる時期だと思います。そうした思いを描いた作品です。本作は、主人公が夢を胸に突き進む18歳の自分と、現実に直面して少しひねくれ始めた25歳の自分として向き合い、過去や本音と対話していく物語になっています。

 
ゼミ生 
作中で18歳の自分と25歳の自分がカメラを通して語りかけてくるシーンが印象的でした。監督は映画を通してどんなことを伝えたいと思っていましたか?

宮森監督
この映画を作り始めた時は、自分自身のためでした。俳優を続けていく中で、「自分に許可を出さないと続けられない」と感じていて、そのために一度、自分のために映画を撮りたかったんです。ですが、撮影や編集を進めていくうちに、「もっと人に届けたい」と思うようになりました。作品の中で言っている「なんにもないけど、なんでもある。いつからでも動き出せば何かにつながる」というメッセージを映画を通じて多くの方に届けたいと思っています。私はこの映画を“全力自己肯定映画”と呼んでいます。観た人が「明日、私も動けるかも」と思えるような作品になっていたら嬉しいです。

 
ゼミ生 
映画では 18歳と25歳の自分のギャップが描かれていましたが、監督ご自身はどうでしたか?

宮森監督
 
18歳の頃は理想が高く、根拠のない自信を持っていました。好きなことを仕事にして生きていきたいという思いが強かったです。しかし、同時に「この道は大変かもしれない」とうっすら感じてもいました。それでも諦めずに挑戦してきた中で、「それでもダメなら映画を撮ろう!」という気持ちが芽生えたのだと思います。

 
ゼミ生 
女性監督として映画を撮る上で、難しさを感じたことはありますか?

宮森監督

初監督作品として撮る上で女性監督として、といった形では特別な困難は感じませんでした。それはこの映画祭が30年続いた歴史の中で、私より前に活動してきた方々が道を切り開いてくれたおかげで、今の私たちが活動できているという事だと思います。ただ、女性映画祭はあって男性映画祭はないということからも、まだマイノリティ的な立場に見られることもあるかもしれません。男女で生き方や考え方が異なるからこそ、その違いを映画で良い形に表現できる女性監督が増えてほしいですね。
ゼミ生
宮森監督は自身の経験や感情を演技で表現されていると思います。心情や葛藤を描く際に大切にしていることは何ですか?

宮森監督
今回の作品は物語自体はフィクションですが、伝えたい部分はノンフィクションです。自分の中で引っかかったことや葛藤は社会全体から見ると小さな一部分に過ぎないかもしれません。しかし、個人的な感情や葛藤こそが社会に繋がると思います。なので、それを映画として遺していけるよう表現していきたいと考えています。

 
ゼミ生
若い女性に「自分らしく生きるヒント」を伝えるとしたら?

宮森監督
 
「己で選択した道は己自身を作り上げる」ですかね。様々な選択肢がある中で、周囲に流されずに自分が「これだ!」と思う道を歩んでほしいです。たとえ周りと違っても、自分で決めた道はたとえそれが上手く行っても行かなくとも、踏み出したこととして納得ができ、一歩一歩それが自己肯定感につながり力になるはずです。
 

ゼミ生
作中では「将来の悩み」や「親との関係」が描かれていましたが、同じような悩みを抱える若い女性に伝えたいことは?

宮森監督
私自身もそうなのですが・・・社会人になると余裕がなくなり、親と過ごす時間が少しずつ減っていくと思います。自分が歳を重ねるのと同時に、親も歳を重ねていくため、できるだけ親と過ごす時間を作り、それをなるべく大切にしてほしいです。
また、将来の悩みについては「今この瞬間を大事にすること」が大切で、やりたいことを諦めずに挑戦してほしいと伝えたいです。自分を大切にしてください。やらない後悔のない日々でありますように。

まとめ

『わたしの頭はいつもうるさい』は、宮森監督自身が脚本を製作し、主演も務めています。この映画を通して、自分らしさとは何か、また私らしさはいかにリアリティのある表現になり得るか、という普遍的な問題について深く探求することができました。時代、国を問わず繰り返し問われる普遍的なテーマについて、実際に映画を監督した宮森監督の言葉を聴くことで、一歩踏み込んだ視点を獲得することができたように思います。宮森監督の言葉からは、「何事にも挑戦し、自分が決めた道を信じること」の大切さがリアリティをもって伝わってきます。映画『わたしの頭はいつもうるさい』は夢と現実に悩む世代に寄り添い、明日への一歩を後押ししてくれる作品だと感じました。