管理栄養学科:皮膚の“うるおい”がカギ?—健康な肌ほど細菌の多様性が高いことを発見—

メディア

概要

管理栄養学科の食品衛生学研究室の研究グループは、健康な若年女性を対象に、皮膚の水分量・皮脂量と皮膚細菌叢の関係を解析しました。その結果、水分量が高いほど細菌の多様性が高く、皮脂量が多いほど多様性が低下する傾向を明らかにしました。さらに、一般に「理想的な肌」とされる正常肌では、他の肌タイプに比べて細菌の多様性が高いことが示されました。
本研究は、皮膚の生理状態が微生物群集の構造に影響を与える可能性を示すものであり、今後のスキンケアや皮膚科学研究への応用が期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「Microorganisms」に掲載されました。
 

研究の背景

ヒトの皮膚には多種多様な細菌が存在し、「皮膚細菌叢(スキンマイクロバイオーム)」として皮膚の健康維持に関与しています。しかし、健康な人の中でも肌質(脂性肌・乾燥肌など)によって細菌叢がどのように異なるのかについては、十分に明らかになっていませんでした。

研究の内容

本研究では、健康な若年女性43名を対象に、鼻周辺の皮膚から細菌を採取し、16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンスにより細菌叢を解析しました。同時に、専用機器を用いて皮膚の水分量および皮脂量を測定し、肌質を「正常肌」「脂性肌」「乾燥肌」「混合肌」の4タイプに分類しました。

その結果、
  • 正常肌は他の肌タイプと比較して細菌の多様性が高い
  • 水分量が高いほど、細菌の種類数や系統的多様性が増加
  • 皮脂量が多いほど、細菌多様性は低下傾向
であることが明らかとなりました。
 
一方で、Staphylococcus epidermidis や Cutibacterium acnes といった代表的な皮膚常在菌の割合は、肌タイプ間で有意な差は認められませんでした。
 

研究のポイント

  • 健康な肌ほど細菌の“多様性”が高い
  • 水分はプラス、皮脂はマイナスに働く可能性
  • 「特定の菌」ではなく「多様性」が重要である可能性
 

今後の展望

本研究は、皮膚の物理的特性(水分・皮脂)が微生物群集の構造を規定する「環境フィルター」として機能する可能性を示しています。今後は、年齢・食生活・生活習慣・季節などの影響や、特定の微生物が皮膚状態に与える因果関係の解明が期待されます。
 
これらの知見は、スキンケア製品の開発や皮膚トラブルの予防・改善戦略の構築に貢献する可能性があります。
 
皮膚細菌叢の構成の違いを主座標分析(PCoA)により可視化した図です。各点は1人分のサンプルを示し、点同士が近いほど細菌の構成が似ていることを意味します。肌タイプごとに分布の違いが見られ、正常肌は他のタイプとは異なる傾向を示しました。
 
 

用語解説

Staphylococcus epidermidis
表皮ブドウ球菌は汗(アルカリ性)や皮脂を餌にグリセリンや脂肪酸を作り出します。脂肪酸は肌を弱酸性に保ち抗菌ペプチドを作り出すことで、悪玉菌の増殖を防ぐと考えられています。皮膚の善玉菌と呼ばれることもあります。
 
Cutibacterium acnes
一般的にニキビの原因と言われていますが、増殖しなければニキビの原因菌になりません。しかし、皮脂の分泌量が増えたり、何かの異常で毛穴をふさいだりすると、アクネ桿菌が過剰に増殖し炎症を引き起こしてニキビになります。
 
皮膚細菌叢(スキンマイクロバイオーム)
私たちの皮膚に存在する多種多様な細菌の集まり。皮膚を外部からの刺激や有害な微生物から守るなど、皮膚の健康に重要な役割を果たしている。近年では、特定の細菌の有無だけでなく、細菌全体の“多様性”やバランスが重要であると考えられている。
 
16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンス:細菌が共通して持つ遺伝子の一部を解析し、皮膚にどのような細菌がどの程度存在するかを調べる方法。
 
主座標分析(PCoA)
それぞれのサンプルに含まれる細菌の種類や割合の違いをもとに、サンプル同士の「似ている度合い」を距離として表し、2次元の図に配置して可視化する方法。点が近いほど細菌の構成が似ており、離れているほど異なることを意味する。
 

論文情報

掲載誌:MDPI「Microorganisms」
論文タイトル:Microbial Diversity Is Associated with Skin Biophysical Properties Across Healthy Human Skin Types
著者:門屋 亨介 ほか
DOI:https://doi.org/10.3390/microorganisms14051026
 

研究者情報

門屋亨介(責任著者)、近藤彩乃、松下彩花、栗林葵、上村映美、田中春菜

問い合わせ先

<研究に関すること>
椙山女学園大学生活科学部管理栄養学科 准教授 門屋亨介
TEL: 052-781-4483
e-mail: rkadoya(at)sugiyama-u.ac.jp
 ※(at)を@に置き換えてください
 
<広報、その他について>
椙山女学園広報課
TEL: 052-781-5940
e-mail: kouhou(at)sugiyama-u.ac.jp
 ※(at)を@に置き換えてください