【現場のプロが教える業界特別講座11】 現代社会学科:「視聴率という魔物」とどう向き合う?メ~テレ元報道局長が語るテレビ業界のリアル
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「テレビでCMの前に『続きは…』ってよく言ってるけど、あれはなぜ?」そんな疑問、実はテレビ業界の深刻な課題につながっています。12月5日(金)、現代社会学科の授業に地元メ~テレで報道局長を務めた平岩潤氏が登壇。テレビの裏側で何が起きているのか、業界の最前線を知る講師が学生に本音を語りました。
テレビ業界の仕組みを知る
12月5日(金)、現代社会学科の授業「放送社会論」(担当:脇田泰子教授)において、メ~テレ(名古屋テレビ放送)で報道局長や常勤監査役を歴任された平岩潤氏による特別講義が行われました。現在は放送批評懇談会企画事業委員やピースあいち運営委員として活動される平岩氏は、一貫して民放に身を置き、報道や営業の最前線で培った経験をもとに、「広告メディアとしてのテレビ・視聴率という魔物」をテーマに、学生にわかりやすく語りかけました。
講義では、日本のテレビ広告の歴史的な経緯、変遷から現在の課題まで、幅広い内容が扱われました。日本では戦後まもなく民間放送が発足し、NHK(公共放送)と民間放送が共存共栄する独自の二元体制が確立されました。民間放送は広告収入を基盤としており、番組の合間に流れるCMは私たちの日常に溶け込んでいます。近年、インターネット広告の規模がテレビを上回りましたが、テレビ広告は依然として大きな存在感を持っています。

視聴率がもたらす影響
平岩氏が特に焦点を当てたのは、「視聴率」というデータがテレビ業界に与える影響です。テレビ広告の料金は視聴率に基づいて設定されており、視聴率は今も広告価値を判断する唯一の指標となっています。放送時間内の広告枠には自ら決めたルールによる上限があるため、テレビ局は広告収入を増やすために視聴率向上を常に追求しなければなりません。
この視聴率重視の姿勢は、90年代以降のデータ分析技術の進化とともに加速しました。その結果、CM前の「続きは…」という演出、字幕の多用、番組開始時刻の前倒しなど、視聴者の関心を引き留める工夫が浸透。一方で、各局が当たったパターンを模倣する画一化や、視聴率の取りにくいジャンルが消えていく多様性の後退など、創造性やチャレンジ精神が弱まる深刻な影響も生まれています。平岩氏は、2003年の日本テレビ視聴率買収事件なども、こうした業界の風潮が背景にあると指摘しました。

これからのメディアとの向き合い方
視聴率は「悪者」なのでしょうか?平岩氏は「重要だが絶対ではない」と語ります。視聴率は過去のデータであり、大切なのはこれからどうしていくかを考えること。緊急報道におけるテレビの即時性・公共性は今も重要であり、災害時の対応力維持は放送の社会的使命です。信頼性や多様性に配慮しながら、作り手のチャレンジ精神を発揮していく必要があると強調されました。
また、学生たちに向けて「メディアは社会に影響を与えると同時に、視聴者の反応からも影響を受ける。戦時期には、戦争報道が「売れた」ためにメディアは戦争支持へと論調を変えたことなど、歴史的教訓を忘れずにメディアを批判的に考察してほしい」とメッセージが送られました。
本2025年に100周年を迎えた日本の放送。その中核を成すテレビ離れの時代だからこそ、番組の価値を視聴率、データの経済的、数値的なものさしだけで判断することから脱却し、インターネット時代における創造性に満ちた新しい放送のあり方を模索することが重要だと学ぶ貴重な機会となりました。
本2025年に100周年を迎えた日本の放送。その中核を成すテレビ離れの時代だからこそ、番組の価値を視聴率、データの経済的、数値的なものさしだけで判断することから脱却し、インターネット時代における創造性に満ちた新しい放送のあり方を模索することが重要だと学ぶ貴重な機会となりました。

