人間力が問われる看護の世界。椙山の教育理念が最大の武器に

井野 恭子 准教授

看護学科

温かな人間性や礼儀作法について、現場から高い評価を受ける看護学部の在学生と卒業生。本学の看護学部は、人間への深い理解やコミュニケーションを重視し、人間力の育成に力を注いでいます。そんな看護学部で、「コミュニケーション技術演習」を担当する井野先生に、看護学部の魅力や大切にされている価値観を聞きました。

「人と深く関わる」ことを実感できた、看護教員という仕事

看護の専門学校を卒業後、産業看護職として企業に就職しました。保健指導などを中心に従業員の健康管理全般に関わっていくうちに、医療従事者と一般社会人とでは健康に対する優先度や価値観が違うということを痛感しました。健康への意識を浸透させるためには私自身がもっと色々なことを知る必要があると思い、10年を区切りに離職し、再び学び直す道へと進みました。それからは心理療法やファシリテーターなどの勉強を経て、臨床の場へ。

本学の教育に携わることになったのは、私が本学の人間関係学研究科社会学専攻で修士課程を学んでいたときの恩師に、看護学部設立のお話をいただいたことがきっかけです。元々看護教育に興味もありましたし、先輩や先生方に恩返しをしたいと思い、本学に入職しました。

私は「人と深く関わる仕事がしたい」という動機で看護職に就きましたが、看護師として働くうちはなかなか「深く」という部分に納得感を得られていませんでした。しかしある日、看護論の指導で“ナイチンゲールの三重の関心”に触れたときに、初めてこれだと思える答えに出会えたんです。それが、自分がライフワークとして探し求めていたことを見出せた瞬間でした。

教育理念“人間になろう”から考える、椙山ならではの看護の基本姿勢

私は看護の基礎である「看護技術」や「コミュニケーション技術演習」の科目を担当しています。聞く技術・話す技術を科目として教えている学校は珍しいですが、患者さんとの向き合い方は看護職としての基本姿勢を問われるところだと思っています。患者さんの想いを引き出そうとするとき、知識だけでは人の心を動かすことはできません。だからこそ「相手の発する言葉をきちんと受け止められる自分自身の在り様を見つめないと、人とは対峙できない」ということを学生たちに伝えています。それは本学の教育理念でもある“人間になろう”につながっていると捉えていますし、私自身も体現できるように学生と対等な姿勢で向き合うことを心がけています。

そのように学生と関わるなかで、本学は人の立場に立って考えることが得意な学生が多いことに気付きました。特にこちらから意図して伝えなくとも、なぜか日常生活のなかで自然に身に付いていて……私はそれを「椙山の魔法」だと思っています。また、本学の看護学部は医学・看護の知識を修得するだけでなく、より人を好きになり、より人に興味関心を深めることができる環境だと感じています。それは“人間になろう”という教育理念が、本学に深く根ざしているからではないでしょうか。

卒業生たちが世代を越えてつなぐ、椙山の「縁の循環」

修士から博士、そして現在まで一貫して「外国人医療人材の活用について」の研究を続けてきました。高齢化が進むうえにどんどん医療人材が不足している日本は、外国人の方々と共に新たな社会をつくる時代に差し掛かっています。私自身も自分事として捉えつつ、リサーチャーとしての視点を持ち、問題提起なども含めさまざまな角度からこの課題を見据えていかなければなりません。外国人の方々が日本の文化に溶け込むための手だてを少しでも広げることが、研究者としての今後の展望です。

一方で教育者としては、卒業生たちのネットワークづくりを目標に掲げています。看護業界はセカンドキャリア、サードキャリアを積んでいく人が多い職種です。母校がベースとなることにより、少しでも安心して自分のキャリア形成にチャレンジする方が増えてくれたら嬉しいですね。そのひとつの例として、私のゼミの3期生が「教育に携わりたい」との思いから助手として戻ってきてくれました。かつて私が恩返しのために椙山に戻ってきたように、世代を越えてつながっていく縁を実感しています。椙山で人間力を培った学生がまた本学で教鞭を取ることで教育理念がさらに説得力を持ち、強固となって根付いてくれるよう願っています。

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