領域

食品科学領域

食品衛生学分野

人が毎日摂取している食べ物には、健康の維持増進に役立つ一方、健康に悪影響を及ぼすものもあります。近年、がんや動脈硬化、肥満、糖尿病などの生活習慣病の発症に、活性酸素だけでなく炎症が密接に関係することが明らかになってきています。食品汚染物質や加工食品に含まれる添加物などは、生体内で酸化ストレスや炎症反応を引き起こす可能性があり、さまざまな疾患の発症や進行に関与することが考えられます。当研究室では、それら食品由来の種々の化学物質について、安全性の検討を目的として遺伝子損傷作用など、生体への影響について研究しています。(担当教員:及川 佐枝子

食品調理科学分野

日本の食生活は国際化や情報化に影響を受けて、さまざまな食文化が混在し食生活は多様になり、また調理技術の革新により機能的に優れた調理器具が開発され新しい調理法も生まれています。一方で食育の観点からは日本本来の調理法も日本の食文化の継承を守るべきものとして和食に注目が集まっています。調理法の相違による調理過程で起こりうるさまざまな現象を調理科学的に捉え分析し、客観的・主観的評価の関連性を探る研究や調理加工品摂取後におこる腸内発酵と人体に及ぼす影響を明らかにするためのヒト対象の実験的研究も行っています。(担当教員:加賀谷 みえ子

生化学分野

高齢化に伴いがん・認知症などの種々の老年病を発症し、QOL低下の原因となっています。高齢化に伴う老年病発症を遅延させ「健康寿命」を延長させることは重要な事案となっています。老年病発症の共通のリスクファクターは老化で、とりわけ注目されているのが、細胞の老化「細胞老化(Cellular Senescence)」です。また最近の研究から、細胞老化を起こした細胞(老化細胞)が炎症やがんの進展を促進する種々の液性生理活性因子を分泌することが明らかになってきています。この現象は、「細胞老化随伴分泌現象(SASP)」と呼ばれ、老年病の発症や個体老化と密接に関わっていると考えられています。そこで研究室では、細胞老化およびSASPを制御する分子メカニズムを明らかにするとともに、それらを抑制する食品由来の生理活性因子の探索を行い、老年病発症や個体老化の予防に関する有効な食品情報の提供を目指しています。(担当教員:本山 昇

食品化学分野

食品中に含まれる成分とその効果について、化学・生物学実験により明らかにすることをめざし、研究を進めていきます。例えば、フラボノイド等食品成分の炎症および疾病予防効果について、愛知県額田郡幸田町産筆柿と筆柿葉茶に含まれる成分とその機能性評価、放射性セシウムによる内部被ばくによる被害を抑制する食品成分の探索とその評価系の確立などです。(担当教員:保田 倫子

栄養科学領域

栄養化学分野

食品に含まれるマイクロニュートリエント(ファイトケミカルなどの微量栄養機能成分)に関する研究を行っています。中でも、「高齢化社会の到来」や「生活習慣病の増加」といった社会問題をはじめ、「食品による美容効果への期待」といった社会ニーズに応えるべくマイクロニュートリエントを見出すことを目的として、種々の培養細胞やモデル動物を用いた探索研究および分子レベルでの作用メカニズム解析を進めています。また、「皮膚」は常に経視できる器官として、体内の状態を計り知る糸口となります。そのため、美しく健やかな肌は食との関わりを抜きにして手に入れることはできません。これまで「皮膚」は外面的美粧の主対象とされてきましたが、科学的根拠の少ない摂食経由の栄養学的な内面美容(内側からいきいきとした肌をつくる)の重要性を検証し、「健やかで美しくあるための食育」についても考究していきます。(担当教員:大口 健司

臨床栄養学分野

人間栄養学に基づき、健常者、高齢者および傷病者の栄養状態の把握、あるいは把握のための手法の開発、従来の把握法の有用性を検証し、そのうえで、栄養学的問題が存在する者に対する栄養介入の効果を疾病予防あるいは疾病治療の点から検証します。臨床栄養学分野では、基本的に病院、介護施設および保健所などの臨床現場を主たる研究の場としているため、研究対象は、健常者、高齢者、傷病者のいずれも可能です。したがって、学部新卒学生のみならず社会人にも大きく門戸を開いています。ことに、すでに臨床現場で活躍している社会人の場合は、現在の職場を活用して研究を企画、推進することができメリットが大きいと考えます。(担当教員:加藤 昌彦

栄養保健学分野

研究室の大きなテーマは、生活習慣、とくに食・運動習慣と疾病・老化との関わりを、進化生物学・進化医学の視点から解明することにあります。現在研究室で具体的に取り組んでいる課題は、動脈硬化と老化の成因の解明と予防です。脂質・糖代謝、とくに食後高血糖・食後高脂血症を視野に入れて、食後の糖・脂質代謝と運動の予防効果を研究しています。また、これに関連して、肥満・メタボリックシンドローム・やせについて、糖・脂質代謝に加えて、凝固・線溶系、酸化ストレス、炎症の面から検討しています。(担当教員:内藤 通孝

公衆衛生学分野

公衆衛生学の研究対象は人間(集団)です。ここでは、比較的規模が大きいアンケート調査(疫学調査)や、健康教育の効果検証のための介入的疫学調査などを行っています。研究テーマは、おおよそ人々の健康に関するものであれば自由に選べますが、現在は、食に関する健康情報の見方・考え方に関する研究、健康教育の効果に関する介入研究、日常生活が精神的健康に与える影響などの研究など中心に行っています。(担当教員:古田 真司

カリキュラム

修了要件および履修方法

生活科学研究科に2年以上在学し、食品栄養科学特別研究10単位及び食品栄養科学特別演習1単位のほか授業科目の中より任意に選択して合計30単位以上修得し、修士論文の審査及び最終試験に合格した者。
上記の修了要件を満たしたものに、「修士(生活科学)」の学位を授与する。


近年の修士論文テーマ
  • チアリーダーの身体組成と食事摂取状況・食態度との関連性に関する検討
  • 食後糖・脂質代謝に対するアミノ酸摂取の影響
  • がん患者の栄養評価におけるPG-SGA(patient generated - subjective global assessment)の有用性に関 する検討 ~予後推定に注目して~
  • 健常若年女性における食後糖・脂質代謝に対する脂肪とアミノ酸の同時摂取による影響
  • 女子大学生における睡眠の実態と生活習慣の関連について
  • 心臓リハビリテーション患者において栄養評価が改善した要因の検討
  • 女子大学生アスリートの食行動変容に関連する要因と栄養教育効果
  • 若年健常女性における血清リン濃度に影響を及ぼす因子の解明
  • 若年女性におけるグルコース変動に関する研究
  • 豆味噌のDipeptidyl peptidase-Ⅳ 阻害作用および活性因子の分離と同定
  • 生体電気インピーダンス法を用いた女子大生の体組成の季節変動に関する研究
  • 消化器疾患患者におけるサルコペニア早期発見ツールとしての指輪っかテストの有用性
  • 健常若年女性における血糖値と生活習慣との関連に関する研究 —難消化性デキストリンの効果について—
  • 高齢者のフレイル状態と摂取栄養素の関係

修了生の主な進路・活躍先

公共機関

科学技術振興事業団、国立長寿医療研究センター、日進市保健センター、愛知県学校栄養職員、名古屋市(保育・栄養)ほか

教育機関

愛知学院大学、愛知学泉大学、金城学院大学、至学館大学、修文大学、椙山女学園大学、中部大学、中部学院大学、東海学園大学、名古屋学芸大学、名古屋経済大学、名古屋文理大学、名古屋栄養専門学校、糸菊学園名古屋調理師専門学校、各高等学校 ほか

医療機関

国家公務員共済組合連合会 東海病院、(医)喜峰会 東海記念病院、(医)新生会第一病院、(医)知邑舎 岩倉病院、名古屋厚生院、岐阜社会保険病院、(医)偕行会グループ ほか

民間企業

味の素ファルマ㈱、オリザ油化㈱、㈱川上酢店、㈱紀文食品、㈱ココストア、㈱サンコール、㈲前原養豚、㈱モスフードサービス、盛田㈱、リノール油脂㈱ ほか

進学

名古屋大学大学院 博士課程(後期課程)、椙山女学園大学大学院 博士後期課程、女子栄養大学大学院 博士後期課程