社会で輝く 未来のあなた
病気や症状はもちろん
その人らしさを大切に
援助を進めています。
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PROFILE
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心理学科 卒業
独立行政法人国立病院機構 東尾張病院勤務
仕事に欠かせないのは
患者さんへの愛情と興味
臨床心理士として、精神科病院の司法病棟で仕事をしています。業務は、個人面談や心理検査、病棟内プログラム司会、地域との連携についての会議や調整、アルコール・薬物乱用防止プログラム講師など。臨床心理士というと面談室で仕事をするイメージが強いかも知れませんが、院外で行う業務も意外と多いですね。院内で担当する患者さんは、20代から60代まで、年齢も状態もさまざま。同じ病気でも症状はそれぞれ違いますし、それ以前に性格やこれまで生きてきた人生も一人ひとり異なりますから、面談では、病状はもちろんですが患者さんの個性にも注目します。心掛けているのは、「この病気だからこうだろう」という先入観を捨て、一人ひとりの患者さんに愛情と興味を持って接すること。その人が何に困り、何を幸せと感じ、どうすればスムーズに社会復帰できるのかを、同じ目線に立って一緒に考えていきます。悩みながらも少しずつ前に進もうとする患者さんは「生きる力」に溢れていて、それを間近で見られるのが仕事の何よりのやりがいです。
心理学科のみんなと履修科目について考えているところです。大学生になり、希望に満ちあふれていました。
(一番左が学生時代の木村さん)

大学・大学院では、発達障害を研究
父が精神科医だったこともあり、臨床心理士に憧れて心理学科に進みました。学部生時代に所属したのは発達障害を研究するゼミ。担当の李敏子教授はとてもエネルギッシュな方で、ただ症例や援助法を学ぶのではなく、それについてどう思うか、必ず意見を求められました。考えがまとまらず上手く伝えられないと、「あなたはボキャ貧ね!」なんて叱咤激励されたりして(笑)。でも今はそのおかげで、患者さんはもちろん、連携するさまざまな人に自ら働きかけ、協力を得ることができています。またゼミの活動では、ある少女との出会いもありました。小学4年生のその子は、発達障害に加え口の病気も患っていたのですが、一生懸命練習して私の名前を呼んでくれたり、鉄棒の逆上がりを見せてくれて。その時、人間の「生きる力」の底知れないパワーに触れ、これを一生の仕事にしようと、大学院でも研究を続けました。
静かで穏やか、という一般的なイメージとは異なり、患者さんとのカウンセリングでは気さくな雰囲気やユーモアも大切にしています。

椙山で学んだ、
相手と誠実に向き合う姿勢
私が患者さんの援助で心掛けているのは、「机上の空論」にならないこと。いくら有用とされている方法でも、患者さんが受け入れられない内容なら勧めても意味がないからです。もちろん、援助する側の人間性やスタンスも大切。実はそれを教えてくれたのは、中2の時の担任の先生でした。当時、校舎のエレベータは教職員専用で、生徒の利用は禁止でも、その先生は「自分がしないことを生徒にやれとは言えない」と、決してエレベータを使いませんでした。颯爽と階段を上る姿、何よりその考え方が素敵で、今でも私の理想の女性像です。仕事では、患者さんに「人と話す時は笑顔でね!」など、社会復帰後の生活のアドバイスも行うので、まずは自分がお手本になろうと、肝に銘じています。「あの先生が言うのならやってみるか」。そんな存在になれるよう、今後も努力したいと思います。
大学報「風」Vol.45より