2019.07.09
ニューヨークでスタンダップ・コメディアンとして活躍中の小池良介さん、通称Rio Koikeさんが、6月26日(水)、国際コミュニケーション学部に到来。SAC(SelfAccessCenter)のランチタイム(英語のみ)でマジックとダンスと軽妙なトークを披露したあと、3限目の小川雅魚教授の「ノンセンス文学」で学外講師として、アメリカの笑いについて語ってくださいました。
Rioさんは、愛知県幡豆郡一色町(現西尾市)出身の53歳。大学在学中にソーシャルダンスで日本一に輝き、25歳のときに渡米、プロのダンサーを目指しますが、コンペティションで11歳のダンサーの演技に愕然、プライドは木っ端微塵に打ち砕かれたそうです。いったん帰国し、捲土重来、今度はマジシャンとして海を渡ります。
ダンサーにしろ、マジシャンにしろ、英語は出来なくてもなんとかなる仕事ですが、どういうわけか、なにかの弾みで、スタンダップ・コメディに魅せられてしまいます。観客の前で言葉だけで勝負する仕事。日本で漫談といわれる芸に近いですが、もっと激しく言葉を機関銃のように発しつづけて笑いをとる話芸です。その頃のRioさんは、片言の英語しか話せませんでした。
猛烈に英語を勉強し、自分で台本を書き、ネイティブの人にチェックを受け、それを1000回読んで、読んで、読み込み、場末のステージに立ちつづけ、すべりまくり、つまり失敗を何度も何度もくりかえし、それでもめげずに「失敗はそこで逃げてしまったらただの失敗だが、さらに頑張ればプロセスになる」を信条にトライをつづけ、やがて気がつくと、ブロードウェイの有名劇場の「ブラック」部門のステージに立っていました。
夕方からはじまる舞台は、日本の寄席と同じく前座から、あちらではアマチュアの芸人から二流のプロ、一流のプロ、超一流のプロ、と進んでいくのですが、ニューヨークではそのあとに聴衆のほとんどがアフロ・アメリカンで占められる時間帯があって、それを「ブラック」と言い慣わしているのです。
公民権運動から半世紀以上経ちますが、アメリカ社会の歪みをいまも肌身に感じている人々です。彼らを笑わせるのは並大抵のことではありません。超一流の芸達者でも上がりたがらない厳しい現場で、Rioさんもマネージャーから依頼されたときには、絶対いやだと断ったそうですが、ついに言いくるめられて恐る恐る出たその場所は、恐怖そのもの、心臓は凍りつきそうだったそうです。しかし終わってみれば、これが拍手喝采の大成功。Rio Koikeの名は一躍ビッグアップルの夜空に轟きました。あの歌姫Beyonceもある晩やってきて、椅子から転げ落ちそうなほど笑っていたということです。真夜中のニューヨークでもっとも有名な日本人かもしれない、とは小川教授の言葉です。
ちなみにRioさんは中学時代、英語の評価は「2」の落ちこぼれだったそうです。10月にもう一度来て、今度は公開の場で、日・米の文化の違い、英語の習得法などについて語ってくれることになっています。
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